私しか免許を持っていなかったので、道中はすべて運転することになった。車内はやたらと賑やか。どこで行くのだとか、どんな魚が釣れるのかとか、もっとスピードを出せとか。すべて英語なので、注意散漫になって仕方がない。時折深呼吸して安全運転を心がける。
途中、ジャックインザボックスというファーストフード店で昼食を摂る。ここのチキンサンドイッチはいつ食べても美味い。ついでにバーガーキングのハンバーガーも好きだ(ただし出来立てのアツアツに限る)。
そうこうしながら夕方にメキシコ湾の港町、ガルベストンに到着。事前に予約していたモーテルにチェックインし、荷物一式を降ろす。そして、すぐさまウォルマートへ走り、友人用らのタックルを購入。さあ、いざ海へ。
砂浜へ車を横付けし、タックルをセットする。素人二人にメタルジグのジャークやフォールを教えるのは難しいと思ったので、マンズのリトルジョージ(ジグスピナー)をただ巻きするように説明する。すると1投目からダンにヒット。20cm前後のピギーパーチだ。小型のフエフキダイのような魚か。
エサの付いていない金属片でなぜ釣れるのかまったく理解できていないようだがまあいいや。そして10分ほど経過した後、またもダンにヒット。今度は、20センチ弱のスペック(シートラウト)だ。続けて台湾人のジムも、同サイズのスペックをヒット。すでに浜は大騒ぎ。
これは私が以前釣ったスペックです。
その後も2人に、フラウンダー(ヒラメ)、スペック、ジャックフィッシュ(メッキに近いかな)が立て続けにヒット。彼らの好釣果とは裏腹に、私はなんとボーズ。ビギナー2人に慰められながら、釣り場を後にした。
これも私が以前釣ったフラウンダー。参考までに。
晩は海辺のカフェで夕食。野郎3人で夜風に吹かれるのはどうかと思ったが、注文したツナバーガーは絶品。これはツナ缶ではなく、まぐろステーキがはさまったバーガーだ。あっさりしていてとても美味しかった。
翌日は、とある大学を目指した。海辺の大学でなんと敷地内に砂浜がある。夏休み中なので、一般に解放されているのだ。もしこんな大学に入学したら、釣りばっかり楽しんで何年も留年しそう。
昨晩の記憶が2人をヤル気にさせている。自信満々でルアーをキャストしている姿は既にベテラン。逆に私は、迷いが生じてルアー選択すらままならない。
今日は、ジムにファーストヒット。中型のスペックをキャッチ。その後アタリが遠のいたが、私がポッパーをキャストすると、水面がざわつき始めた。ヒットはしないが、魚がチェイスしてくるのが見える。
すると、ダンがジャックフィシュをキャッチ。どうやら1投ごとにアタリがあるらしく、2人とも必死の形相でキャストしている。結局トータルで5匹ほどしかキャッチできなかったが、かなり堪能した様子だ。
そして、遅ればせながら私にも何かがヒット。一瞬スペックか?と期待したが、すぐにジャンプしたのでレディーフィッシュ(見た目は淡水のハスに近い)と判明。最後の最後までジャンプし続けるので釣り味は最高だが、食味はいまいちだ。
昼の休憩を挟んで、夕方5時から同じ場所で再開。控えめのアクションで誘っていると、掛け上がりを越えた辺りでヒット。今度こそスペックだと直感する。ファイトを楽しみながら寄せてくると、40センチオーバーの良型だった。ようやく運が向いてきたかと思ったが、後が続かない。
一方、リトルジョージからメタルジグに変えても2人の好調は続く。ジャークやリフト&フォールを教えなくても、見よう見まねで動かせるのだから大したものだ。それぞれスペックやピギーパーチを次々と上げる中、私のルアーは再び相手にされなくなった。うーん、何が悪いのかさっぱり分からない。さっさと寝て翌日のラストチャンスに賭けることにしよう。早い目にモーテルへ引き上げる。
あっという間に最終日。朝日が何とも清清しい。チェックアウトを済ませ、クーラーに氷を補充する。今日こそ結果を出さなくては。
はやる気持ちを抑え車を運転していたら、例の砂浜へ向かう途中にある跳ね上げ橋の手前で赤信号が点灯。橋が真ん中から2つに割れてゆっくりと上がり、その下の海を船が悠然と通り過ぎる。まるで映画のワンシーンのような光景。しばし談笑してやり過ごす。
今朝は7時から釣り開始。2人がスプーンやメタルジグを投げる中、僕はロングAをチョイスする。小雨が降る中、それぞれ好きな場所に陣取り黙々とキャスト。今日は10時に切り上げると決めているので、みんな真剣そのものだ。
しばらくすると雨がかなり激しくなってきたが、誰も休もうとしない。2人の驚異的な粘りと集中力には脱帽だ。私も負けじと足下を探っていると、ガツンとスペックがヒット。慎重に寄せてみると、45センチの良型だった。同時に雨も小降りになり、美しい虹が出てきた。大物への期待が高まる。
これまた別の日の釣果で恐縮ですが。
どうやら今日も、ダンがラッキーボーイのようだ。ジャックフィッシュやスペック、レディーフィッシュを一通り釣り上げた後、明らかに今までと違う強烈なアタリ。ドラグが唸りを上げ、竿がひん曲がっている。明らかに青物の引きだ。かけ上がりに沿って左右へ走っているようなので、追いかけるように指示する。
2分くらい追いかけ回しただろうか。ようやく魚が波打ち際へ姿を現わした。正体はセロマッカレル(サワラ)。上アゴの皮1枚に掛かっているだけのようだ。しかし、これ以上走られたらバラしてしまうと思い、ラインを掴んで無理やり浜へ引きずり上げた。ダンは歓喜の雄叫び。ウルトラライトタックルでよく釣り上げたものだ。
これを機に、私も青物に狙いを変更。カストマスターにジャークを入れるいつもの釣りに戻した。全力で遠投して、肩が抜けるくらい強引なジャークを繰り返す。
残り1時間。はるか沖では、イルカの親子が優雅に泳ぎ回っている。ずっと沈黙していたジムも、40センチオーバーのスペックを立て続けに釣り上げ、調子が上がってきたようだ。2人は近場を丁寧に探って結果を出しているが、僕はひたすら遠投して広範囲を攻める。が、時間は刻々と過ぎていく。
そろそろ潮時かなという時、ドスンと強烈なアタリがきた。さっきのセロマッカレルと同様、どんどん横へ走っていく。「今度こそ青物だ」と直感し、一緒に砂浜を走る。しばしファイトを楽しんだ後にじっくりと寄せてくると、40センチほどのジャックフィッシュのスレ掛かりだった。道理で引くわけである。メッキというよりは、小型GTと呼ぶべき大きさかもしれない。
これは釣れたんじゃなくてアクシデントだよと2人に冷やかされたが、最後においしいおみやげを確保できて良かった。結局3日間で僕とジムが7〜8匹ずつ、ダンが10匹以上釣り上げ、非常に満足のいく釣行であった。
その晩は、他の友人も集めて大宴会。みんな新鮮な魚に飢えていたらしく、刺し身や塩焼きはあっという間になくなってしまった。

思い返してみると6年以上も前の話。私の道楽に付き合ってくれた2人と、純真無垢なメキシコ湾の魚たちに改めて感謝したい。